2倍の重さを支える!? 多雪地域の非住宅木造が抱える課題
北陸をはじめとする多雪地域では、非住宅建築の木造化がなかなか進みません。その理由の一つが「構造荷重の課題」です。
たとえば、同じ平屋建ての木造倉庫でも、一般地域(積雪30cm)と多雪地域(積雪150cm)では、屋根にかかる荷重が2倍以上にもなります。
今回は、具体的な数値をもとに、多雪地域における構造的な難しさと、それに対応するWOODCOREの設計技術についてご紹介します。
このコラムでわかること
重さだけじゃない? 地震力にも違いが
建築基準法では、地域ごとに積雪荷重や地震力の取り扱いが異なります。
一般地域と多雪地域の違い

たとえば、積雪150cmの地域では、
150cm × 30N/cm² = 4500N/m²(=450kg/m²)
という非常に大きな荷重が屋根にかかります。
さらに、多雪地域では地震時にもこの一部(35%)を荷重として考慮する必要があるため、構造計画の前提そのものが大きく変わってくるのです。
① 雪の重さ(単位荷重)
表の数値は雪の単位荷重を示しています。
積雪荷重は基準法で決まっている積雪量に雪の単位荷重を乗じて、1㎡あたりの重さを求めます。
例;積雪量150㎝の場合
積雪荷重=150㎝×30 N/cm/㎡=4500N/㎡
10Nを1㎏として計算すると、1㎡あたり450㎏もの積雪荷重を考慮することになります。
② 地震力の計算
一般地域では、地震力には雪の荷重を考慮する必要がありません。
一方、多雪地域では、少し雪が積もっている状態でも地震に遭うことを想定し、雪の荷重の35%を加算して地震力を求めます。
例:積雪量150㎝の場合
積雪荷重の35%=150㎝×30 N/cm/㎡×0.35=1575N/㎡
木造平屋の地震力算定用の重量は、一般的には1.5KN/㎡程度です。
多雪地域の場合は、地震力算定用の重量に積雪荷重の35%も加算しなければならないため、積雪量150㎝だと約2倍の地震力が作用することになります。
荷重が“倍以上”になるという現実
WOODCOREの標準的な平屋倉庫(約218㎡)を例に、一般地域(積雪量30㎝)と多雪地域(積雪量150㎝)での荷重を比較してみます。
【検討条件】
平面形状: 218㎡(10.01m×21.84m)
屋根の荷重: 1KN/㎡と仮定(トラス@2.73m、折半屋根を想定)
地震算定用の固定荷重: 1.5KN/㎡と仮定(外壁ガルバリウム程度を想定)
積雪量: 一般地域(積雪量30㎝)/多雪地域(積雪量150㎝)

※積雪量30㎝の場合、積雪を考慮しない長期荷重で断面が決定します。
① 一般地域(積雪量30㎝)
積雪荷重=30㎝×20N/cm/㎡=600N/㎡→0.6KN/㎡
積雪時の荷重=屋根の荷重+積雪荷重=1KN/㎡+0.6KN/㎡=1.6KN/㎡
積雪時にトラスが支える荷重=2.73m×10.01m×1.6KN/㎡=43.7KN
地震力
地震力=地震力算定用の固定荷重×地震層せん断力係数
=1.5KN/㎡×218㎡×0.2=65.4KN
② 多雪地域(積雪量150㎝)
積雪荷重=150㎝×30N/cm/㎡=4500N/㎡→4.5KN/㎡
積雪時の荷重=屋根の荷重+積雪荷重=(1KN/㎡+4.5KN/㎡)×=5.5KN/㎡
積雪時にトラスが支える荷重=2.73m×10.01m×5.5KN/㎡=150.3KN
地震力
地震力=(地震力算定用の固定荷重+積雪荷重の35%)×地震層せん断力係数
(1.5KN/㎡+4.5KN/㎡×0.35)×218㎡×0.2=134KN
120cmの積雪差が、ここまで構造に影響を与えるという点に、多雪地域ならではの設計上の難しさがあります
多雪地域ではWOODCOREが力を発揮

構造荷重が倍になるということは、設計そのものを見直す必要があるということです。
特に木造の場合、小規模住宅に最適化された構造設計をそのまま非住宅に転用するのは困難です。スパンが長くなると、構造材の寸法やピッチ、接合部の仕様まで大きく変わってきます。
WOODCOREでは、多雪地域を主な設計対象としており、積雪荷重・地震荷重の両面から合理的な木構造設計を行っています。
コストと構造のバランスを両立するトラス設計
たとえば10mスパンの屋根架構の場合、
- 一般地域:トラスピッチ1.82mで対応可能
- 多雪地域:同条件ではトラスピッチ0.91mが必要になりコストが上昇
WOODCOREの規格倉庫では、トラスピッチ2.73mを実現し、構造合理性とコストの最適化を両立しています。
多雪地域での非住宅木造なら「木造化ラボ」
非住宅木造を検討される際、多雪地域だから対応が難しいと思っていませんか?
WOODCOREは、構造の専門性と施工合理性を両立させる独自の設計ノウハウで、プロジェクトをサポートします。
構造荷重・設計法・トラスの仕様など、気になることがあればぜひ「木造化ラボ」へお問い合わせください!
まとめ
1、多雪地域では、積雪荷重・地震荷重ともに一般地域の2倍以上の構造負担がある
2、設計初期から対応する必要があり、特に木造では構造合理性がカギ
3、WOODCOREでは、多雪地域を熟知した設計で、コストと構造を両立
中大規模木造にご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

ウッドリンクは中大規模木造の頼れるパートナー
ウッドリンクを一言で言えば、「木造建築の構造体メーカー」です。
ウッドリンクでは阪神大震災を機に構造体の独自開発をスタートし、耐震性と断熱性に優れた高品質軸組パネル「プレウォール工法」を開発しました。
現場加工ではなく、プレカットと呼ばれる工場加工を行うことで、品質の安定した高精度な構造体を提供することができます。
降雪地帯で湿度の高い、北陸の気候に適した「プレウォール工法」。
その高い信頼性が支持され、ウッドリンクは構造体メーカーとして北陸No.1シェアの実績があり、倉庫や店舗、高齢者施設などの非住宅の用途にも多くの実績があります。