中・大型木造倉庫 における 木造化 の メリット と 構造設計 のポイント
木造建築が注目される背景には、環境負荷低減や脱炭素、ESG投資への対応が求められる建設業界の変化があります。
特にコスト削減や工期短縮の面で大きなメリットを持つ中・大型木造倉庫は、企業の競争力向上にも直結する有力な選択肢になっています。
木造化によって材料費や施工コストの削減が可能であり、減価償却にも優れた効率をもたらします。
また、サステナブルな資材である木材の使用は、CO₂排出量を抑えるための重要な取り組みであり、ESG投資の視点でも価値を持つため、木造倉庫は環境意識の高い企業の経営者から の関心も高まっています。
本記事では、中・大型木造倉庫に焦点を当て、木造化のメリットと構造設計のポイントを解説していきます。
特にトラスの活用により、従来の建築構造では難しかった大空間の実現が可能となり、構造の強度と効率性を高めます。
木造倉庫の持つポテンシャルを構造設計の視点から検証します。
このコラムでわかること
木造 の 倉庫 がもたらす メリット とは
木造による倉庫は、環境負荷の軽減を目指す社会において注目を集めています。
従来の鉄骨造や鉄筋コンクリート造の倉庫と比べ、コスト削減や施工の効率性など、直接的なビジネスメリットをもたらすことから、現在、多くの企業で導入が検討されています。
「環境、社会、企業統治の要素を考慮する(ESG投資)」のESGとは、Environment(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス・企業統治)の頭文字をとったもので す。
企業が環境問題や社会問題に取り組んでいるか、ガバナンス(企業統治)に力を入れているかどうかなどを考慮して投資するかどうか決める考え方で、「ESG投資」と呼ばれています。
さらに、木造による倉庫はそのサステナビリティや環境への配慮が評価され、ESG投資の視点からも支持されているため、持続可能な経営を志向する企業にとって非常に有力な選択肢です。
コスト削減 と 減価償却 の利点
木造倉庫の最大の利点のひとつは、コスト削減に直接的に寄与する点です。
木材は鋼材やコンクリートに比べて軽量で加工が容易であるため、材料費だけでなく、地盤改良工事や基礎工事のコストを抑えることができます。
また、木材は組み立てやすく、現場での加工時間が短縮できるため、人件費も削減されます。
特に、広い面積を必要とする中・大型倉庫では、材料費や施工費の削減効果がより大きく表れます。
また、木造は他の構造と比較して減価償却の期間が短く設定されており、企業の資産管理においても大きなメリットとなります。
木造は耐用年数が比較的短い設定(実際には設計・施工・維持管理等のレベルで耐用年数は大きく異なる)となっており、減価償却の期間が短縮されるため、投資回収までの期間が短 く済み会計上も有利です。
結果として、企業の資産計画において木造倉庫は財務負担の軽減と資産の効率的な活用を促進する選択肢と言えます。
工期短縮 と効率的な 施工
木造建築のもう一つの強みは、施工期間の短縮です。
木材は軽く加工しやすいため、倉庫の建設現場での組み立てもスムーズに進められます。
また、木造建築では、プレカットやプレファブ工法といった事前に部材を加工・組み立てる工法が採用されることが多く、現場での作業時間が大幅に削減されます。
これにより、一般的な建設工期よりも短期間での完成が可能となり、倉庫の早期稼働が実現します。
工期の短縮は、倉庫の早期運用が可能になるだけでなく、天候や他の要因によるリスクも軽減します。
特に物流の流れを止められない企業にとっては、工期の短縮はビジネス活動の迅速な開始と計画の確実な遂行に大きく寄与します。
これは、短納期が求められるプロジェクトにおいて非常に有利な要素であり、木造倉庫の導入が企業の競争力を高めるための強力な要因となります。
サステナブル な選択と ESG投資
木材は再生可能な資源であり、適切に管理された森林から供給される木材は、地球環境への負担を軽減する資材として高く評価されています。
木造倉庫に使用される木材は、成長過程でCO₂を吸収するため、カーボンニュートラルの観点からも優れた資材です。
また、建物のライフサイクルを通じて、木材は他の材料に比べて製造過程でのエネルギー消費が少なく、環境負荷が小さいとされています。
こうしたサステナビリティの観点から、木造倉庫は企業の環境への責任を示す象徴的な建物となり、持続可能な経営を実現するうえで欠かせない資産になります。
また、ESG投資の視点で考えると、持続可能な資材を活用した建築物への投資は、環境配慮型のポートフォリオを形成する上で重要な位置づけとなります。
これにより、木造倉庫は単なる建築物にとどまらず、企業がサステナブルな未来を目指すための象徴的な資産となり、企業価値の向上にも貢献します。
環境への配慮が高まる昨今では、サステナブルな建築を推進するための助成金・補助金制度が多数用意されています。
特に、木造建築は二酸化炭素の排出削減や再生可能な資源の使用を推進するという観点から、国や地方自治体による支援対象となることが多く、これらの補助金を活用することで初期投資を削減することが可能です。
中・大型木造倉庫 の 構造設計 の考え方
中・大型木造倉庫の設計には、広い内部空間を確保しつつ高い耐震性や耐久性を実現するための工夫が必要です。
日本は地震が頻発するため、木造であっても強固な構造が求められますが、木材は構造の軽量化や柔軟性が強みで、耐震性を確保しやすい特性があります。
また、倉庫としての機能を十分に発揮するためには、荷物の搬出入に支障のない広いスペースや大開口が必須です。
そのため、木材特有の技術をもったトラスを活用し、耐震性の高い大空間を実現できる構造設計が求められます。
中・大型木造倉庫 の 耐震性能 を確保するポイント
倉庫は、建物内に大量の荷物を保管することから、耐震性の確保がビジネスの継続性に直結します。
木造は軽量でしなやかさがあるため、地震の揺れに対して柔軟に対応でき、揺れを吸収しやすいという特性があります。
建設地の条件なども考慮すべき要素で、多雪区域においては、積雪による割り増しを考慮する必要があります。
木造の耐震性能をさらに向上させるためには、柱や梁などの接合部を強化することが重要です。
特に中・大型の倉庫の場合、大スパンや大開口を実現するために、大断面の構造用集成材と接合金物の組合せによる木造ラーメン工法などが有効です。
中・大型木造倉庫 の 大空間 に適した トラス
トラス構造は、三角形のパターンを基本単位とし、各パーツが相互に支え合うことで、軽量かつ強固な構造を実現します。
木造トラスは鉄骨と比べて軽量で、材料費や工事費を抑えることができるため、コスト面でも大きな利点を持っています。
中・大型木造倉庫 に求められる 大開口
倉庫は、多種多様な物資を搬入・搬出するため、大型の開口部を設けることが重要です。
大きな開口部が確保できることで、トラックの乗り入れや積み下ろし作業がスムーズに行えるようになり、物流の効率化に貢献します。
倉庫の開口部のサイズや位置は、運用効率に大きな影響を与えるため、構造設計の段階から物流の動線を考慮した計画が必要です。
大開口が可能になることで、設計の柔軟性が高まり、倉庫内の環境をより効率的に整備することができます。
中・大型木造倉庫 の 大空間 を トラス で実現する 構造設計
倉庫は、多くの物資を保管・管理し、効率的に物流を行うための重要な施設です。
そのため、倉庫の建築設計では広大な空間が求められ、内部に柱が少なく、搬出入のための大きな開口部を備えた設計が理想的です。
木造倉庫では、こうしたニーズを満たすために、トラス構造のような技術を活用することで、耐久性と耐震性を兼ね備えた大空間を実現できます。
大空間 に適した トラス の概要
木造トラスは鉄骨と比べて軽量で、材料費や工事費を抑えることができるため、コスト面でも大きな利点を持っています。
倉庫のように内部に柱の少ない広いスペースが求められる建物では、トラス構造のようにスパンが長く、強度のある構造が重要です。
木造によるトラス構造を採用することで、通常の構造では必要となる内部柱の数を減らし、自由度の高いレイアウトが可能になります。
その結果、倉庫内での物流や動線の効率化が図れ、商品の搬出入や在庫管理がしやすくなります。
さらに、トラス構造はデザインの自由度も高いため、視覚的にも優れた開放感を持つ空間を実現でき、企業のイメージアップにもつながります。
トラス構造 の 構造設計
トラス構造とは、3本の部材を三角形に構成することで、荷重がかかっても各部材に軸力しか発生せず、曲げモーメントを受けにくい構造形式のことです。
構造的に安定性が高いため、大空間・大スパンの建築や、橋梁等に用いられることが多いです。
トラス構造の構造設計の特性は主に下記です。
・部材間に軸力しか作用しないため、細い部材で構造設計すること可能
・構造材を現すことで意匠性を表現することができる
・小屋部分がトラス架構となるため、断面を傷つけずに設備配管を通すことができる
トラス構造 の メリット
木材を使用したトラス構造は、鉄骨トラスに比べて重量が軽く、コスト面でも優れていま す。
鉄骨に比べて加工しやすい木材は、工場であらかじめ加工された部材を現場で組み立てることができ、施工期間の短縮や施工コストの削減が可能です。
さらに、トラス構造は内部に柱を設置せずに広い空間を確保できるため、倉庫内のレイアウト自由度が高まり、フォークリフトなどの大型機器がスムーズに移動できる環境が整いま す。
木造でありながらも鉄骨に匹敵する強度を確保し、設計の自由度と経済性を兼ね備えたトラス構造は、中・大型木造倉庫の理想的な選択肢です。
注意点としては、トラスの場合は、地組をして起こさなければいけないので現場作業の負担が大きく、非住宅木造に不慣れな方にとってトラスの施工は不安材料になります。
まとめ
木造倉庫の導入は、企業の競争力を高めるための重要な投資と位置付けられています。
コスト削減といった経済的なメリットに加え、環境への配慮が求められる現代においては、サステナブルな建材である木材を使用することで社会的評価も向上します。
特に、トラスや張弦梁の採用は、柱の少ない広い空間を必要とする倉庫に最適で、物流の効率化や商品管理のしやすさを実現します。
また、木造倉庫は、一般的な倉庫建設と比較して工期の短縮が可能であり、早期に事業を開始したい企業にとっても有利です。
施工期間が短く済むことで、コストの削減だけでなく、運用開始までのスピードアップが図れ、経営効率が向上します。
さらに、木造建築特有の「温かみのある外観」は、企業のイメージアップにも寄与します。
木材は地域の資源であり、地元の森林業や林業との連携を深めることで、地域経済の活性化にも貢献できる点もメリットの一つです。
加えて、企業が持続可能な経営を行う上で、ESG投資に配慮した選択は、ステークホルダーからの信頼を得るためにも重要です。
中・大型木造倉庫を導入することで、環境、社会、ガバナンスの観点においても評価を高め、企業のブランド価値を向上させることができます。
今後、環境に配慮しつつ効率的な事業活動を行うことがますます求められる中、木造倉庫の需要はさらに拡大するでしょう。
中・大型木造倉庫は、サステナブルで経済的な価値を提供するだけでなく、企業が社会的責任を果たし、持続可能な未来に貢献するための理想的な手段として広く普及していくことが 期待されます。
木造化に取り組む企業は、この動向を受けて積極的な導入を検討する価値があるでしょう。
中大規模木造にご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。
ウッドリンク は 中大規模木造 の頼れる パートナー
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